障害者か障がい者か

国語の授業をしていて「障害者」と黒板に書いたところ、ひとりの小学生に「今は「障がい者」が正しい表記だ」と指摘されて愕然となった。
もちろん「害」という字が与える印象の悪さによって不快感を被る人に対する配慮、それに対し、むしろ字を変えることそのものが問題を助長しているのだなどといろいろな論争があるようだ。おそらく前者の立場は、それこそ「害」という字を範列的に「災害」や「害虫」といった語と対照させているのだろう。しかし、障害者という語における「害」の字は、「害を与える」ではなく「そこなう」の意味であり、やはり障害者への配慮を云々する連中の方が、障害者自身の位置を貶め、蔑んでいるとしか考えられない。とりたてて人間に対して物理的な実害を与えるわけではないゴキブリなどに、その不快感から「害虫」と名ざすのと同じ発想に彼らは立っている。
そしてなにより僕が愕然としたのは、言葉の表記を変えることがあたかも社会の改善や進歩のしるしかのように子供たちに語る学校教員の似非啓蒙主義的な姿勢である。昨今「障害者」が「障がい者」へと表記変更される傾向があるのならば、そこに含まれる欺瞞的な市民意識や、一方的な価値観の押し付けに対して危惧を示すのが教師の仕事であり、上で述べたような、アホな連想ゲーム的発想が、社会のルールとして適用されるときに行使されている権力のありようこそを意識させるのが、子供に対する大人の倫理ではないか。アホらしい。